幼い頃からずっと輝夜様のお世話係をしてまいりました。
やりたい放題の輝夜様に呼び出され、女性と戯れる姿を目にしたことも少なくありません。
そんなある日のこと、輝夜様はあろうことかお父様である神楽様に、赤ん坊の姿で地球へと飛ばされてしまったのです。
親のお金で遊んでばかりいらっしゃったので、神楽様がお怒りになるのも当然でしょう。育て方を誤ったと嘆いておりました。
しかし月以外の場所では、輝夜様を王族の者と敬う者もいません。私は心配で、月から輝夜様の様子を窺うことにしました。
地球に降り立ってすぐ、輝夜様は竹雅と名乗る男に拾われておりました。
竹雅様の不器用な育児は、とてもじゃないですが見ていられません。私ならもっとうまくお世話出来るのですが……。
その後、輝夜様の体は普通の者とは違う速度で成長していきました。
それでもまだ成体とは言い難い体で、輝夜様は邪なことを考えはじめたのです。中身は輝夜様のままなので仕方がないのかもしれません。
ただ、一つ問題なのが竹雅様のご職業です。彼は春画絵師だったのです。
普段の輝夜様でしたら絵などには興味を示さないのですが、欲情されてしまったようで……。
竹雅様も竹雅様です。まさか未成熟な輝夜様の体をお慰めしようとなさるなんて、一体どういう思考回路をお持ちなのでしょう。
さて、私も輝夜様の監視ばかりしているわけではございません。
輝夜様がいなくなってからというもの、神楽様からのお呼び出しが増えました。
以前から度々あったのですが、輝夜様のお世話で忙しく、お断りすることも多かったのです。
神楽様の手ほどきで順応した体は、大きな悦びを得るようになっておりました。
しかしこれも限度というものがあります。毎日呼び出されていては、体がもたないのです。
そろそろ輝夜様に帰って来て頂かなくてはと、手紙を送ることにしました。
数日後、地球までお迎えにあがる旨を伝え、私は神楽様に内緒で準備を進めたのです。
予定の日が迫る中、私はいつものように輝夜様の様子を覗き見ました。
すると、輝夜様は私が見たこともないような表情で竹雅様を見つめておられました。
私が何年かかっても引き出せなかったお顔を、竹雅様は一ヶ月足らずで引き出してしまったとでもいうのでしょうか。
私の足は、自然と神楽様の部屋に向いておりました。
神楽様は私を迎え入れると、なにも言わず、頭を撫でてくださいました。
もしかしたら神楽様も、他人の手で立派に育っていく輝夜様を眺め、少なからず寂しい思いをなさっていたのかもしれません。涙を堪える私を神楽様は優しく慰めてくださいました。
この後、私は神楽様の命により、輝夜様のお世話係を終えるのでした。
―月詠の手記より―